Newsgroups: fj.sci.geo
Path: owani!ono
From: ono@cc.hirosaki-u.ac.jp (Takeshi Onoda)
Subject: Earthquake prediction with VAN method
Sender: ono@owani.cc.hirosaki-u.ac.jp (Takeshi Onoda)
Message-ID: <1995Jan19.042702.22461@owani.cc.hirosaki-u.ac.jp>
Date: Thu, 19 Jan 1995 04:27:02 GMT (日本時間 1995/01/19 13:27:02)
Lines: 54
Organization: Information Processing Center, Hirosaki Univ., Japan
X-Newsreader: mnews [version 1.17] 1994-01/27(Thu)

昨年は新聞などにおいて,春頃にゲラーさんによる「地震予知は不可能」
論が紹介され,年末には逆に「VAN法」による地震予知の実例が紹介
されたりして,普段最先端の研究に触れにくい人々の間でも地震関連学会
の現状が伝わったかなと思える一年でした.私にはVAN法が使い物に
なるかどうかは確かめる手段がありませんが,何年か前からVAN法に
ついて研究されている方達の学会発表を聞いていましたし,「岩石破壊
実験で,破壊に至る過程で電流放出が起きることが確認された」との
結果は充分信頼性があると思っています.理論的にも根拠が無いもので
ないことは確かだと思います.それが日本で使い物になるかはやっぱり
「実際にやってみなければ断言出来ない」と思われるのですが,問題は
現在地震予知に携っていない,あるいは本業としていない地球電磁気学の
研究者に,普段の自分の研究環境から「類推」した否定的意見が強く,
時に研究者としてはあるまじき,後ろ向きな意見が出されることです.
朝日新聞の昨年12月24日のVAN法の記事の中で,こともあろうに気象庁
地磁気観測所の主任研究官・小嶋美都子さんの意見として(以下記事抜粋)

  「日本では電気的な雑信号が多い.それを取り除く努力をしないで,
  有望だと主張するのは意味がない」と批判し,「国内の研究者は
  いますぐ決別すべきだ」と厳しい.           (抜粋ここまで)
            ^^^^^^^^^^
と紹介されたことには,私のような駆け出しの研究者にも,驚きと失望の
ようなものを感じました.研究者としては,検証されてない新しい手法が
あったらそれを「検証すべき」言うべきで「決別すべき」にはならない
はずです.日本でVAN法は実地研究が本格的に始まったわけではない
のですから,小嶋さんにしたって「VAN法と決別すべき」と言う為
の研究を何も行なっていないのは明白です.もちろん小嶋さんの「自分の
研究」にとっては日本の電気的な雑信号はあまりに大きすぎるものでしょう.
ですから私たちがすべきなのは「それを取り除く努力」であるはずで,
「決別」してしまったら誰がその努力をするのでしょう.我々地球科学の
研究者はその努力を注ぐことの出来る一番近い位置にいるものとして
期待され,研究費を与えられているのですから,軽々しく先のような
発言をすべきではありません.まして今,関東・東海地区の地震予知に
使おうとしている様々な手法も色々な雑信号が多くて直前予知が成功する
可能性に疑問符が付けられるではないですか.雑信号の多いデータも
重ね合わすほど信号成分が見えて来ることがあります.これは
スタッキングと呼ばれ,多くの研究者の方々が学ばれ,使用している
ことでしょう.VAN法のデータも他の手法のデータと組み合わせれば
信号成分を取り出せるかもしれません.それともあまりに雑信号が多くて
気象庁は地震予知から「決別して」しまっているのでしょうか.

私の住んでいる青森のローカル新聞に,京都大学の尾池和夫さんの自宅で
観測中の超長波電波が今回の地震の一時間前から異常値を示したとの
記事がありました.今回のような内陸型地震はVAN法が実用されている
ギリシャと同じタイプ.VAN法の根拠である「破壊の過程での電流の放出」
によるものだったとしても不思議ではありません.しかも今回壊れた断層は
京都までつながる断層群のなかにあり,その方向に強くその影響が現れて
いた可能性があります.尾池さんのデータ一つだけでは何の結論が出せな
くとも,もしこれからVAN法による観測施設(既存の他の電磁気の
観測施設とはやり方が違う--->だから既存の電磁気観測の結果で類推する
のは短絡的なのです)が整備され,実験研究を積んでいけば,次の時には
まさに直前予知に成功するかもしれません.今,予知研究の先端にいる方
たちは性急に結論を出さずに実証研究に力を振り向けて欲しいと思います.

.........................小嶋さんが意見を寄せてくれたらいいなぁ.

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   =  小野田  英(おのだ  たけし) :ono@cc.hirosaki-u.ac.jp                =
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   =  弘前大学大学院理学研究科修士課程地球科学専攻地震学研究室(2+α)年  =
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